2010年8月30日月曜日

夏を振り返って ~岩屋山志明院編~

ブログをご覧のみなさま、こんにちはっ。

 八月も残すところあと二日。あまりにも暑い夏でしたが、過ぎてしまえばあっという間だったかもしれません。ここからはきっと少しは過ごしやすくなってくれるはず。そう信じてやまないA.F.E商品企画室からお届けします。……まぁ、たぶん十月くらいまでは暑いんでしょうけどね、実際……(←すでに達観の境地)。
 皆さま、今年の夏は充実したものだったでしょうか?

 A.F.E商品企画室としては例年以上に実り多い夏だったような気がします。その成果は九月の更新で。全部の商品をどかっと一度に掲載できるのが一番いいのですが、染めの空いた時間を見計らっての更新作業ですので例によって小出しの掲載になってしまうと思います……。気長にお待ちいただければ幸いです。

 さて、先日の日曜日、今年の夏に撮りためていた写真を整理していると、「……五山以外にも結構写真撮ってたんだなぁ……」としみじみ。その中から是非紹介したいものをいくつかピックアップしてお届けしたいと思いますー。
 では最初の一つ。岩屋山志明院。いってみましょう。
 七月三十日、その日も当たり前のように京都は暑い。
 だからふらふらと北山へ私が向かうことも何もおかしいことはなかったのですが(ぉぃ、その日は鞍馬、貴船ルートから離れ、雲ヶ畑方面へと足を延ばすことにしました。京都の北山といえば貴船、鞍馬が有名ですし、その認識であっていると思うのですが、川床が開かれるこの季節の休日、貴船・鞍馬方面は下手をすると車で身動きができなくなるという状況になることもしばしば。
 暑い中、渋滞の中に巻き込まれるのは正直勘弁してほしかったので、雲ヶ畑。貴船と同じく川のそばを走れるので風が気持ちいいんですよね。雨上がりは特に。
 とりあえずの目的地は志明院でいいかな。
 目指すのは志明院、鴨の流れの源流へ。という風に走り始めました。
                       (京都北山 雲ヶ畑近辺)
 たぶん、京都に住んでいる人でも行ったことはおろか、おそらく聞いたこともない、という方が多いと思います。この岩屋山志明院。むしろ京都に住んでいる人よりも、司馬遼太郎先生の著作を読んでおられる方のほうが、この寺院を知っておられる方がいらっしゃるのではないでしょうか。「街道をゆく」やエッセイ集で何度か志明院について記述されていたように思います。
 志明院についてはいろいろな話が実際あるのですが、私個人としては水がきれいで冷たくて、紅葉がきれいで、本当に静か。考え事をするときや、ただボーっとするときに非常にいい、お気に入りの場所の一つです。北山の片隅にあり、行き止まりの道の一番奥にあることもあって、あまり交通の便が良いとはお世辞にも言えないのですけれどね。
 
                       (雲ヶ畑地区 分社 厳島神社)
 雲ヶ畑地区は北山の山間にある集落でこの季節、本当に緑鮮やか。
 秋には紅葉も美しく、かなり良い道だと思うのですが、貴船や鞍馬が近くにあるために、どうしても影が薄くなってしまうんでしょうね。雲ヶ畑にもいくつか神社やお寺があり、どれもなかなかよく手入れされているのですがもうひとつ決め手に欠けているようです。
 
 この日は前日に雨が降っていたこともあり、山の中も涼しくて走りよかったのですがそれもお昼まで。
昼近くになると日差しですっかり空気が乾いてしまい、うだるような暑さになります。山道を走り始めのころには道の横に流れる川でバーベキューをしたりキャンプをしたり、水遊びをされてたりと多くの家族連れや学生がおられたのですが、山深くなり川の源流に近付くに従って人も絶えていきます。鴨川の源流は静謐としていて、ここで読書したらはかどるだろうな、と思えるほどのいいところ。
 志明院まであと少し、全速力で向かいますー。

                            (岩屋山志明院 楼門にて)
 と、いうところで志明院に到着しました。
 先に書いておかなければなりません。この志明院は拝観料300円で一般の方にも開放されているのですが、守らなければならない決まりごとがいくつかあります。
 まず、楼門の内側での写真撮影は禁止。境内は写真に撮ることができません。だから、このブログに掲載できる志明院の写真も上の一枚だけです。
 もうひとつ大事なことは、境内のなかの綱がはられた道(けもの道といったほうがいいかもしれませんが)の向こうには決して立ち行ってはならないということ。
 この志明院の境内の谷には修験道の行場があります。当然ですが、私たち一般の人は立ち入り禁止となります。迂闊に入り込んで道に迷ったら大変なことになると思いますので、この2点は必ず守ってください、ということを、私は初めてこの志明院に来た時に住職か神職か、いずれにしてもそのような方に念を押されました。
 最初は冗談だろう、と思っていたのですが、山門の格子に古びたわらじが数珠のようにいくつも結び結わいつけられていたのを見て、非常に驚いた記憶があります。こんな近くにこんな世界があるのかと。
 とはいうものの、普通にお参りする分には普通のお寺なのであまりお気になさらずに。
 お寺の方も気さくなよい方ですし。
 山門前でお寺の方に一言、二言ご挨拶。
 「えーっ、自転車で来られたん? どこから?」
 「市内からです」
 「すごい汗やし、滝で汗流していったら?」
 「……では遠慮なく(なんだこの会話は^^;)」
 手を洗い、口をすすいだのち、楼門をくぐり境内へと入ったのでした。
 
 門をくぐると長い階段がまっすぐに続きます。階段の右手側には鐘つきの小さなお堂があり、お地蔵さまが。頭上には木々の枝。あんなに暑かった日差しも届かず、むしろ涼しいくらいです。左手は山と川。階段を登りきると立派なお堂が建っています。 お堂の左手にまた道があり、荒い石と土の階段。そしてその左手には小さな広場。……おばあさんが言ってた滝ってこれのことでしょうか。綱の向こうに滝が見えた、という話を聞いたことがあるのですが、そこは私はいけませんし。
 広場のこの滝。これは滝、というよりも打たせ湯ですね。とはいえ、バチバチと高いところから落ちてくる水は結構痛いものですが。水が落ちてくるところには祠が一つ。飛竜権現を祀っておられるよう。
 ……というかこの場所、演目「鳴滝」の鳴神上人が龍神を封じたとされる、まさにその場所なんじゃないんですかこれ。おばあさん、そんな由緒ある滝で気軽に汗を流していったらとか、どんだけ気さくなんですか^^; さすがにこれは無理なので、そのまま階段を登ってゆきます。
 
 この志明院にお参りする個所は主に二か所あります。
 ひとつは切り立った崖の中腹にある洞窟の中に建てられたお堂。
 もうひとつは洞窟の中に鎮座された数体のお地蔵さま。
 もちろん、境内にある仏像や不動明王像は有名な方の作品(運慶かその縁者の作)なので、それも見どころの一つと言えるのでしょうが、上の二つは周囲の雰囲気といい、是非一度見ていただきたいと思います。
 特にお堂。
 崖の中腹、八メートルくらいのところにぽっかりと空いた洞窟にすっぽり収まるようにお堂がたてられているのですが、そこからの眺めがまた綺麗。紅葉の時は特に。
 本当に写真でお見せできないのが残念でなりません。
 もう一つの洞窟のほうも――そもそも、京都市内にこんな大きな洞窟があるということそのものが大変珍しいのですが――寂びた雰囲気のある非常に趣深いところです。
 境内は変わった形の岩や石などもあって、京都の他の神社仏閣とは様相がまるで異なります。京都の寺社といえば、きれいな庭を思い浮かべてしまうものですが、この志明院は別物。
 全く世間的には有名ではありませんが、是非一度訪れていただきたい寺社のひとつですね。
 今年の秋、紅葉の季節にもう一度来ようと思います。……本当に写真を撮れないのが残念^^;
 ちょっと最後は駆け足になってしまいましたが、今日はここまでにしたいと思います。
 お読みいただきありがとうございました。
 次のブログでお会いしましょう。失礼しました。
 Art Fiber Endo 商品企画室
 

2010年8月17日火曜日

五山送り火にて

ブログをご覧の皆さま、こんばんは。
 暦の上では立秋も過ぎ、一応この暑さを残暑と呼べる時期になったようです。……残暑。7月からさらに暑くなっても残暑。そろそろ言葉を現実に近づけるべきなんじゃないでしょうか。続暑とか。
 今日も空調と扇風機に挟まれないと作業できないA.F.E商品企画室からお届けします。 
 関東のほうも最高気温を日々更新し続けているようですが、京都も暑い日が続いております。今週は一週間、毎日36℃を超えるそうです。もはや暑すぎて声も出ません(ぇ。最近は熱中症で倒れられる方も多くいらっしゃるそうで。皆さまも暑い日は水分と塩分の補給をお忘れなきよう……。
 さて。
 皆さま、今年のお盆はどこかに遊びに行かれたでしょうか? 私も連休が始まる前は出かける気満々だったのですが、あまりの暑さで「……まぁ、今年はいいかな……」と挫け、結局出かけたのは二日だけ。あとは空調の利いた部屋でのんびりと、たまりにたまった小説を消化する日々を過ごしました(推理小説とか気に入った作家の新刊が出たら買うのですが、一気に読んでしまわないと気が済まない性格ですので、普段は読めません。そのため小説のストックは溜まる一方で^^;)。たまにはこういう休日もいいものです。

 お盆休み最終日は五山送り火。
 五山送り火は大文字焼きの呼び名があるように大の字が有名なのですが、わたしが見に行ったのは「鳥居」。ここ数年、私が見に行っているのはすべて鳥居ですね。では、皆さま、写真を交えて送り火をお楽しみくださいませ。

                     (広沢の池、東岸から鳥居を)

 市内中央から見える右、左大文字や船形と違い、嵐山近くで燃える鳥居の火は交通の便が少し悪いこと、それと鳥居の火を見るのなら他の火を見ることはまずできないことから、比較的見に来られる方は少ないかもしれません(右、左、船形は山が比較的高く、近い距離にあるため、たとえば右大文字を見に行ったあと、船形を見に行くこともできるのですが、鳥居は他の火から離れすぎているため、他の火を見ることはあきらめなけらばなりません。そのため送り火を見に来られる観光客の皆さまは右、船形、左大文字を見るために市内中央に集中する傾向が見られます)。
 上の写真は広沢の池、東岸から鳥居の方向を撮ったもの。画面中央の山から煙が出ていますが、夜に備えて種火を燃やしている最中のようです。
 ちなみに私がこの広沢の池に来たのはPM6:30。火がつく二時間前。さすがにこの時間なら写真撮れる場所、選び放題でしょうと楽観していたのですが。
 ……一人、ツワモノがいらっしゃる……。
 Nicon、D3Sのフル装備を三脚に備え付け、すでに鳥居の方角にスタンバイ。おそらくはサブとして使われのでしょう、首からはズームレンズを装着した一眼。さらに地面に置かれた鞄には別のレンズが見えます。三脚の後ろに簡易椅子を置き、狙撃兵かと突っ込みが入るのを待っていらっしゃるかのような面持ち。さらに問題なのは、私が目星をつけていた、まさにその場所にカメラを据え付けておられたわけで。
 ……負けた。すべてにおいて今年は負けてしまいましたよ……。
 これはもうしょうがない。ここまで気合を入れて写真を撮りに来られたのだから、清々しく場所をお譲りしましょう。私の場所じゃないけれど。私の場所じゃあないけれど(←シツコイ。近くにお住まいの方たちでしょうか、池のすぐ近くまで降りてビニールシートを広げられる方も。それでもまだ火がつくのは先とあって、人の数はまだまばら。今の間に何か飲み物でも買っておこうかなと、五分ほどその場所を離れて戻ってきたところ。
 ……別の狙撃兵の方がさっき私がいたところにカメラを据え付けていらっしゃるのですが(ぇ。
 これはあれですか。
 周りを歩いている人、実はカメラの設置場所を探してうろうろしている人たちばかりですかっ。すごすごとまた場所を変えます……。これは迂闊に離れられない……。
 火がともるまであと二時間弱。ここからは不動の覚悟で仁王立ち。団らんとした雰囲気で火がともるのを待つ家族連れの方々とは明らかに違う、絶対に楽しみに来てるんじゃないだろう、この人たちと思わせるような雰囲気を撮影組は醸し出していたのではないかと思います。……つ、疲れるorz。
                    (夕暮れ、鳥居中央に種火)
 そうこうするうちに日は少しずつ沈み、鳥居中央の種火が遠目に見えるようになりました。
 中央の種火のほかに、もう何箇所か種火をつくり、そこから周囲へと火を回すことで大の字や鳥居の形にしていきます。火の回りは早く、一度回れば5分かかりません。左大文字などは見る場所から比較的近くにあることもあって、松明を持って走る人の影を見て取ることができるのですが、鳥居はちょっと遠いですね……。双眼鏡とかをもってくればよかったかな、と少し後悔。
 種火がついたからすぐに火が回る、というわけではなく、ここからが長いのですが、第一段階は終了です。
                   (黄昏、鳥居の数か所に種火立つ)
 中央の種火のほかに数か所、新しく種火がたちます。たぶん、これでいつでも火を回せる状態になっていると思うのですが……。時間まで待機しているのでしょうね。PM8:20くらいまではここから動きはありません。さて、ここまでは鳥居にばかりカメラを向けていましたが、広沢の池へと向けましょう。池は今、こんな感じです。
                   (黄昏過ぎた広沢の池と鳥居)
 ブログには載せていませんでしたが、池の北岸から灯明が流され、風に流されるまま南岸へと広がります。写真右上、ぽつぽつと小さな光がともっているのが鳥居の種火、あとの光は灯明です。灯明の広がり方は風任せなので、密度の高いところ、低いところがでてきます。流し始めの北岸は光の帯ができたよう。風に散らされてやがて鳥居の下まで流れ着きます。
 ……思ったよりも今日は風が強いですね……。日中”そよ”とも吹かないくせにっ。さも「私は今すごく仕事をしています」とばかりに吹いています。鳥居の火がともる前に、灯明が池中央を超えている。これはすごくまずい!
 このっ! 風っ! 馬鹿っ! (←撮影組、心からの叫び)

                                  (鳥居燃ゆ)
 などという、こちらの願望はつゆ知らず、風も止まず。
 ……灯明、ほとんど南岸と北岸に分かれて流れ着いちゃいましたよorz。
 そんな中でようやく鳥居に火が。
 火が燃え始めてから鳥居を見に来る人の数はぐっと増えたようです。
 本当は灯明の日に浮かぶ鳥居を撮りたかったのですが……残念ながら今年もダメだったようです。
 
                         (五山送り火、鳥居)
 
 上の写真は火をつけて間もなくのもの。ここから時間が経つにつれ火はさらに鮮やかになり、そしてやがて消えていきます。もちろん火の勢いが一番強いときが一番の見どころだと思います。その一番の綺麗なときは是非、皆さま自身で。いつか京都に来られた時に是非見ていただきたいな、そう思います。デジカメの写真と実際に見た印象は全然違ってしまうんですよね……。私の腕が悪いせいも多々あるとは思いますし。
 五山送り火を見るベストな場所ですが(あくまで個人的な私見ですが)、
 右大文字 ……御所の中、中立売門から入って東へ少しのところ。
 船形    ……鴨川沿い、北山橋以北
 左大文字 ……千本北山周辺の車道
 鳥居    ……広沢の池、東岸
 
 妙、法はあまり何度も行ったことがないのでなんとも言えません……。
 もし来年の五山送り火に京都に来られることがありましたら、是非ご覧いただきたいと思います。
 というところで今日はここまでに。
 お付き合いいただきありがとうございました。
 次のブログでお会いしましょう。失礼しました。
Art Fiber Endo  商品企画室