2009年2月6日金曜日

第三回、染めについてのあれこれ

 ブログをご覧の皆様、こんばんは。
 今日もColour Labからお届けいたします。奇跡だ(マテ。
 
 不純物の話について話そうかと思ったのですが、やはりロット段の話を終わらせてからにしたいと思います。ロット段が出る理由その3、染料によるロット段の話、はじめますー。
 染料とひとくくりにしていますが、染料には化学染料と、草木染めなどに使われるような天然染料に分けられます。蛍光染料という区分もありますが、これも化学染料なのでひとくくりにしましょう。
 天然染料はご存じのとおり、動物や植物から取り出されます。有名どころはアイ、アカネ、ベニバナなど。ほかにも色々あります。天然染料のいいところ、悪いところ上げればたくさんあるのですが、ロット段に関して言えば一つの共通点を持ちます。それは、天然由来であるため染料のロット段が大きく、別ロットでの色の再現性は化学染料よりも一般的に低いというものです。もちろん、熟練の職人の手によればロットの分かれた染料を使用しても色差は小さくなると思うのですが、普通の人が染めることを考えた場合、天然染料は化学染料よりもロット段による色のブレが大きくなるのは否定できないと思います。
 化学染料が発達した現在、普通の染屋は化学染料を使用しています。この種類の染料は化学的に合成されているため、天然染料よりもロット段が小さく、種類が非常に多いのが特徴です。また、色落ちがしにくい高堅牢度を保持した染料も多く、現在のアパレル業界での染色は化学染料がなければ成り立ちません。均質な染料を安定的に供給するという意味で、化学染料は最高の品質を持っていると思います。
 しかしながら、この化学染料でもロット段は発生します。
 たとえば、Aという染料について言いますと、生産ロット1495番の染料と1496番の染料との間には基準値からプラスマイナス3%(基準値から色が最大3%薄くなる、あるいは濃くなる)という無視できないロット段があります。これは私の体感からお話しているわけではなく、染料メーカー自体がそのように公表しているのですから、やはりロット段はあるのでしょう。
 以前お話ししたように、三原色が均等に入るような色合い(ベージュ、グレーなど)はわずかな染料投入量のぶれでも色が変わって見えてしまうのですから、ロット段による色のブレは無視できないレベルになってしまいます。
 もちろん、同ロットの染料を使用すればこういうことは考えなくてもいいのですが、たとえば定番色のような何年も続くような色については、やはりどうしてもどこかで染料のロットが変わってしまうことになります。その時は同じ染料を使用し、同じ染料%を採用したとしても色が揺れることもあるでしょう。
 手芸をされておられる皆さんの中には定番の刺繍糸のはずなのに、色がまったく変わってしまっている、という経験をされた方もおられるかもしれません。これもロット段だと思われるのですが、この場合はもしかしたら染料そのものが変わっている可能性もあります。
 定番色というのは何年、時には何十年も続く商品です。
 その間に使用していた染料が廃番になってしまったりすることもあったりします。当然、違う染料で元の色に近づける作業をするのですが、それでも再現しきれない場合などがあるのかもしれません。染料が変わると演色性の問題が必ず発生しますからね……(この演色性という言葉、どうか覚えておいてほしいです。後日、演色性について詳しく説明したいと思います。これは色を見る上で最も重要なものにも関わらず、業界においてすら軽視されているというかなり難儀な問題を説明するのに必要なので)。
 というわけで。
 ロット段が起こる理由、なんとなくわかっていただけたでしょうか?
 繊維の性質、染料のロット、それから人の手による不確実性。ほかの条件はすべて同じにして、使用する染色機械が変わるだけで色は変わってしまいます。それほどまでに色というものはすごく微妙。
 だから、本当は必要な分を必要なだけ染めて使うのが一番いいのです。必要な量を見極めるのは難しいかもしれませんが、本当はそれが一番。……という話は、染屋の本分としてどうなのよ、と思わないでもないのですが。

今日はここまでにしたいと思います。
皆様、次のブログでお会いしましょう。失礼しました。

遠藤染工場 Colour Lab

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