2010年3月16日火曜日

染色するときの注意 (同じ色に染められない! の続き)

 ブログをご覧の皆さま、こんばんは。

 今日もColour Labからお届けします。微妙にタイトルが変わったような気がしますが、このまま突き進みたいと思います。
 昨日の話の続きになるのですが、染料も薬剤も、温度も後処理も同じようにしていたお客様の染めがどうしてうまくいかなかったのでしょうか、という話で終わっていたと思います。どうしてでしょうか?

 意外に思われるかもしれませんが、色が変わってしまった原因は水。
 染める時に使った水の量を変えなかったことが原因でした。
 下の写真をご覧ください。

 実は昨日のブログを書きはじめたときには一回で終わらせる気だったのですが、目で見てもらうのが一番いいだろうということで、ブログ用に染めてみました。 ちょっと写真が皆様にどのように見えているのかこちらからは確認できないのですが、おそらく上の布は茶色、下の布はグレーっぽく見えているのではないでしょうか? 同じ色には見えないと思います。
 実はこの二つの布は染料の配合、染料と布のロット、薬剤、温度曲線、後処理をすべて同じ条件で行った精密染色です。唯一つ、染めるのに使った水の量だけは二倍ほど差をつけました。下の布は上の布の二倍の水の量で染料を溶かして染めた、ということです。繰り返して言いますが染料は全く同じ量を投入しています。にもかかわらず、水の量が変わるだけで色にこれだけの違いが出てしまうのです。糸の重量に対して水の量をどのくらいにするのか、ということは実は非常に重要です。
 
 織り糸の足りない分を染めるというとき、ふつう前回の糸の量よりも少ない染めになります。
 その減らした比率だけ、染めるときに使用する水の量も減らす必要があるということです。そうでなければ上の写真のように大きく色が変わってしまうでしょう。
 
 皆様お気づきだと思いますが、水の量の多寡による色のぶれは、単純に色が薄くなるということではありません。染料には水の多寡に大きく影響を受けるものもあれば、そうでないものもあります。上の写真では、青の系統の染料は黄や赤の染料に比べて水の多寡の影響は受けにくかった、ということをご理解いただけると思います。
 そして厄介なことにこの現象はすべての染料に見られるものであり(少なくとも私が日常的に使用する数百種類の染料では確認済み)、使用する染料の性質の相対的な差によって発現することから、染めに慣れた私たちでも水の多寡を変えた場合、どの方向に色が傾くのか予想することは非常に難しいのです。というか、正確に予想するのはまず無理でしょう。基本的にロットに差が出にくい化学繊維ですら上のようなものですから、綿や絹などの天然繊維ではどうなるか、想像していただければお分かりいただけると思います。

 上のことを少し注意していただければ同じ色を染める時、大外れな出来上がりになるということはかなり減ると思います。これに気をつけて駄目だったら……少し注意深く丁寧に染めてみてください^^;。
 しかし、ここまで書いておいてなんですが、完全に同じ色を染めるのは無理だと割り切っていただいたほうがいいと思います。全くのブレもなく同じ色を染めるのは非常に難しい作業ですから。私たち染屋でも難しいですね、実際。
 だから、一番いいのは最初の染めで必要な分を染めるということです。必要な量を的確に予想するのは難しいですけどね^^;
 人生と同じく色との出会いも一期一会。
 そいう気持ちで染めに向かわれるのがいいのではないでしょうか?
 
 以上、染色をするときの注意、(同じ色に染められない!)の解答編を終わりたいと思います。

 染めに興味のなかった方には少し退屈だったかもしれませんが、Colour Labはこういうところなのでご理解くださいませ^^;。
 それでは皆様、次のブログでお会いしましょう。
 長文、失礼しました。

遠藤染工場 Colour Lab / Art Fiber Endo 商品企画室

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